ゴーン被告のレバノン逃亡で露呈した日本の司法の脆弱性
刑事裁判を控え保釈中だったゴーン被告が、何らかの方法で日本を違法に出国し、レバノンの首都ベイルートに潜伏中であることが、昨年末ギリギリになってニュースとして飛び込んできました。
15億円の保釈金と海外逃亡防止のためにパスポートを預かっていたといいますが、全く手ぬるかったというべきでしょう。今回のプライベートジェットを使った逃亡計画には22億円ほどかかったと言いますから、15億円の保釈金などゴーン被告にとっては痛くもかゆくもないのでしょう。
パスポートの管理も、弁護士団が4冊を預かり、フランスのパスポート1冊は鍵付きの透明なケースに入れて本人が持参していたというから、まぬけなおもちゃです。鍵は市販のダイヤル錠だったそうです。性善説にもほどがあります。
そもそも厳格な出入国管理が行われているはずの日本の空港を、ゴーン被告はどうやって突破したのでしょうか。関西空港を使ったという噂や、音響機器のケースに入って楽器だと偽って出たという噂があります。いずれにしてもこんなことが許されるなら、テロリストによる銃器や薬物の大量輸入など容易いということになり、今年オリンピックを迎える日本としては保安体制が緩いことを世界中に露呈したことになります。
東京地検と東京地裁はインターポールに依頼して国際手配をしたとのことですが、肝心のレバノン政府はゴーン被告をかくまう態勢です。日本とレバノンの間には身柄の引き渡しに関する条約を結んでいません。このあたりは外務省の落ち度でしょう。ご存じのように法律は属地主義です。大使館であっても治外法権が認められていて、一歩国外に出れば日本の司法は手出しができません。
日本政府とレバノン政府の力関係が明らかになる場面ですが、ここでレバノン政府が強気の姿勢を示すとなると、これまで多額の資金援助をしてきた日本は恩義を感じさせるどころかコケにされる形になります。それだけは避けねばなりません。
一部の邪推に寄りますと、今回のゴーン被告の逃亡を官邸は事前に知っていて、超法規的措置として政治的判断で逃がしたのだ、という噂があります。あまりにも逃亡劇がスムーズで入管を簡単にパスしたことから類推した噂です。もし本当なら大問題ですが、今のところ噂話でしか有りません。噂に過ぎないことを祈ります。
同様にプラベートジェットの離陸には米軍基地が使われたという、根も葉もない噂もあります。しかし世界には民間の大規模な軍事組織がいくつか存在しているのは事実で、それらはビジネスとして軍事行動を請け負います。彼らは国軍レベルの武力とシステムを持ち、高額の報酬を受け取って正規軍の下請けをします。今回のゴーン被告の逃亡も、民間軍事組織が実行犯だった可能性もあります。
いずれにしても8日からの記者会見で、ゴーン被告は大々的に自らの正義をマスコミに訴え、日本の司法制度がいかに劣悪であるかを酷評する予定です。善者と悪者をごっそりすり替えてしまおうという作戦でしょう。
ただ日本の司法制度には、叩かれてもやむを得ない瑕疵があると僕は感じています。ゴーン氏の130日間という長期にわたる拘留。裁判前の推定無罪である被告に対して、取り調べのためとはいえ長期間身柄を拘束し続けるのは、人質司法ではないかとの国際的な批判を受けかねません。また世界中で常識であるGPS付きブレスレットを使って保釈するという方法も、日本では取り入れられていません。旧態依然とした日本の司法は、ツッコミどころ満載です。よりにもよって犯罪者に指摘されたくはないですが、ゴーン被告は思い切り記者会見で吠えるでしょう。
まもなく詳細が明らかになるでしょうが、富裕層にのみ超法規的措置がとられる、ということはあってはならないことです。日本の司法が威信を回復して正常に機能するためにも、ゴーン被告の日本への身柄の返還は必須です。東京地検、東京地裁だけではなく、外務省、官邸も国を挙げてレバノンとの交渉に当たってほしいものです。
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