日本国憲法はアメリカの押し付けではない?
戦後70年にあたり、自由民主党が、国民の度肝を抜くような憲法草案を出したのは多くの方がご存知だと思います。日本の現行憲法は、アメリカからの押し付け、とよく言われますが、それは本当でしょうか。仮にそうだとしても何かの問題になるのでしょうか。
まず、憲法は大きな事件の後に作成される傾向が多いものです。一つの例として、アメリカ合衆国憲法を挙げます。1776年のイギリスからの独立宣言の後、混乱の最中で作成されました。この憲法の思想に大きな影響を与えたのはのフランス哲学者のシャルル・ド・モンテスキュー、イギリスの哲学者のジョン・ロックです。アメリカ合衆国憲法にはこの2人の思想が大きく反映されています。フランス共和国憲法はフランス革命の後に作成されました。そもそも多くの国の憲法の立憲主義の定義は、古代ギリシャの自然法論に遡るものです。
また、日本で先の大戦が始まった際に真っ先に敗戦を見抜き、現在の東京都町田市に移り、武相荘(ぶあいそう)に住み、農業に励み、戦後、アメリカと対等の関係を築こうとした有名な方がいます。
白洲次郎さんです。著書の「プリンシプルのない日本」、新潮文庫、P225~226に
新憲法のプリンシプルは立派なものである。(中略)がマッカーサが考えたのか幣原総理が発明したのか別として、戦争放棄などのその圧巻である。押し付けられようが、そうでなかろうが、いいものはいいとして素直に受け入れるべきではないだろうか。
と記述があります。大変共感できる内容です。
さらに私が疑問に思ったのは、戦後70年、日本人が初めて基本的人権を持ち、それなりに上手く機能してきたのは本当に押し付けなんだろうか、と。明治時代を自由闊達に生きた中江兆民さんを思い出し、誰が現行憲法を作成されたのか調べました。日本の現行憲法を作成された憲法学者の鈴木安蔵さんは、国民の自由と権利を大切にした自由民権運動をされ、ルソーの啓蒙思想(暗きに光を放つ)に大きく影響を受けた方です。鈴木安蔵さんに関する著書、資料には、GHQの案と照らし合わせ、推敲に推敲を重ねた上で、日本が二度と悲惨な戦争を繰り返さないように、また国民の基本的人権と自由を尊重した憲法だと書いてあります。アメリカの押しつけだと言い切る自民党の漫画政策パンフレットと大きく矛盾がありますが。この大きな矛盾について、国民が考える機会を作るために安倍首相にご提案をしたいのですが。小泉元首相のように、TVのCMで、安倍首相と菅官房長官、(困ったときに俯く)谷垣さん、片山さつきさんと仲良く「明治時代からやり直す憲法改正!」と大々的にご宣伝なされたらどうでしょうか。
注)今回の投稿記事は、歴史認識に間違えがないか、制度等の詳しい学者に制度設計に最終チェックをしてもらいました。
参考文献
「憲法学原論」鈴木安蔵、勁草全書
「憲法制定とロエスレル(日本憲法諸原案の起草経緯と其の根本精神)」鈴木安蔵、東洋経済新報社
「憲法「押しつけ」の幻」五十嵐仁、大原社会問題研究所雑誌No.577
「プリンシプルのない日本」白洲次郎、新潮文庫
画像クレジット
http://fanblogs.jp/keme/archive/387/0
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編集者注:この件に関する編集者の考え方は、「日本国憲法は”Amazing Grace”だ」をお読みください。
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現行憲法の白眉は、第一章「天皇」だと思いますよ。実に良くできています。
天皇は、歴史を冷静に考えれば「(権威の)象徴」以外の機能を持ったことはほとんどありません。
軍事と政治を完全に握った武家将軍ですら、しばしば天皇の「権威の象徴」としての機能を取り入れました。
この天皇の憲法上の規定が、アメリカの押しつけであったはずはなく、国体護持が「無条件降伏」の中の「事実上の条件」であった当時の日本指導部の最高の叡知と工夫が詰まっています。
(私も字数オーバーするとコメントボタンが消えますなあ)
柳本さんは公務員のお仕事をされてたと知りました。、行政機関で働く方は法律を扱う
プロです。
私は法律の知識はど素人です。分からないので調べ、その後、自民党の漫画政策パンフ
レットの内容を読み, デタラメが多すぎるのでは?と思いました。
1945年の10月に、高野岩三郎さんを中心に憲法研究会が発足され、憲法学者の鈴木安蔵
さんは主要メンバーです。鈴木安蔵さんが研究会の内容をまとめて、最終案を出し12月の
年末に憲法草案を要綱を作りました。「2ヶ月かかって作られた草案」です。その草案は
GHQの案とほぼ同じでした。足らないところは「国民主権」の宣言規定、「天皇象徴」を
入れたのが現行憲法になります。
かようにみごとな天皇に関する記述を盛り込んだ現行憲法がアメリカ人に書けたはずもなく、「押しつけ」という人は、実は憲法をよく読み込めていないのだと思います。
「アメリカが押しつけた」のなら、主権者であり、軍の統帥者であった天皇が堂々と生き残るはずもなく、憲法上から抹消されてしかるべきだと気づかないのはまったく愚かです。
参考文献には古本が多いです。他の方が見やすいように、鈴木安蔵さんが
メインで作られた草案とGHQの草案に近似性があったことを書いてあるサイトを
見つけました。ほぼ同じと書きましたが、憲法は解釈が難しく、この後、また他の
メンバーと一緒に多くの資料を作成され、推敲し、審議を重ねながら作成されたのが、
現行の日本国憲法です。(漫画製作パンフレットでは、翻訳しただけと話がありますが、
大きく矛盾があります。)
http://www.ndl.go.jp/constitution/shiryo/03/060shoshi.html
多くの方が読めるように、参考文献で挙げた資料のURLを 見つけました。
「憲法「押しつけ」の幻」五十嵐仁、大原社会問題研究所雑誌No.577
http://oohara.mt.tama.hosei.ac.jp/oz/577/577-07.pdf
によると現行憲法は「憲法研究会が生みだした日本側のオリジナルな思想である」
と記述があります。
自民党の漫画政策パンフレットのURLを挙げておきます。
http://constitution.jimin.jp/pamphlet/
ここでは現行憲法は「押し付けられた翻訳」になっています。
(翻訳というのは、小説家の村上春樹さんの文章の特徴である「みたいです」
it seems like,という文章だと思います。憲法が翻訳というのは今回、調べる際に
本や資料からは、憲法を作るのは渦中の中でも大変な作業だと知り、大きな矛盾
を感じます。)
さらに調べ私なりに結論が出始めました。自民党の漫画政策パンフレット
と憲法学者 鈴木安蔵さんに関する資料の立場は「大きな矛盾」の言葉で
片づけられるものではなく「宇宙人と地球人の認識の違い」と書いて
いいほど、かけ離れたものです。
弁護士の伊藤真さんも(護憲派)「アメリカからの(翻訳の)押し付け
ではなく、憲法学者鈴木安蔵さんの草案を下に、推敲を重ね、審議を
経た上での作成された現行憲法だと、とてもわかりやすく書いています。
「アメリカに押しつけられたのは、警察予備隊の創設から始まる憲法9条
の形骸化」と書いてあります。
URLを挙げておきます。
http://www.magazine9.jp/juku/043/043.html
また、参考文献で挙げた「憲法「押しつけ」の幻」では、
「憲法で最も重要とも言うべき「主権の宣言規定」という問題を見過ご
していた。しかし,日本が明治期に生み育はぐくんできたデモクラシー
の思想と伝統が,その大きな盲点を憲法起草者たちに気づかせ
「国民主権」の規定が憲法に高らかに掲げられることになったのだ。」
とあります。
その一方で自民党の漫画政策パンフレットレ憲法で最も重要とも言うべ
ットでは「日本の現行憲法では、前文がアメリカ合衆国憲法やリン
カーンの演説翻訳口調が使われている」
繰り返しになりますが「大きな矛盾」ではなく「宇宙人と地球人の認識の
違い」が適切と考えています。
「宇宙人の認識」を、今年、憲法改正として挙げてよいのでしょうか?
(コメントより、再度復習として記事にしたほうがいいかもしれません。
ほかのPCを使ったら字数制限がなくなりました。)
(誤字が大きく、自民党の漫画政策パンフレットに書いてあることを
再度載せます。)
自民党の漫画政策パンフレットでは、
「日本の現行憲法では、前文がアメリカ合衆国憲法やリンカーンの演説
翻訳口調が使われている」
と記述があります。
鈴木安蔵さんに関する資料によると、現行憲法の前文の「「国民主権の宣言
規定」は日本国憲法の核心部分であり、日本側のオリジナルな思想である。」
です。