予測が難しいから成功したアベノミクス
先日、株価と石油価格の杉江さんが書かれた記事のコメント欄で「未来の予測に関しては、もちろん限度があります(以下略)」の非常に貴重なコメントを読みました。
経済の予測が難しいから成功したのがアベノミクスです。アベノミクスとはどういった経済政策なのでしょうか。大きな特徴を2点挙げてみます。
特徴①「合理的期待形成論」
経済政策がある程度、民間のシンクタンク等によって前もって、完全に予測されたら成果として、その経済政策は全く効果をもたらしません。
安倍首相は再度の法人税率引下げ、最低賃金の引上げ、「デフレから脱却」発言など、「これから景気が良くなりなる」と「期待を作り実体を追いつかせる」という経済政策を3年以上行いました。もし人々が「期待(良い意味でのバブル)」だと気づいたら、最近まで日経平均株価約2万円まで上がらなかった、と考えられます。
特徴②「非伝統的金融政策」
禁じ手である日銀の国債買いオペレーションを一年で約80兆円(約300兆円累積)しています。日銀が買い取った分は、事実上の債権放棄(日銀は政府に支払いを求めない、買い受けた国債額分お札を刷る、リフレーション)です。
この禁じ手は2000年頃から少しずつ案が出て、決定的になったのは、リーマンショックの後の世界的金融不況の時からです。非伝統的金融政策を「禁じ手の範囲でFRBも行い」、成功を納めました。
そして日本では、歴史に残る平成24年11月14日 の党首討論で、当時の安倍総裁が「どちらがデフレから脱却できるでしょう(注)」とのような発言しています。あの時、野田元首相は非伝統的金融政策が始まることを知っていました。その上で3党合意を取り付け、景気が良くなるのを見越して、消費税10%の引き上げを安倍総裁に託しました。
上記の特徴①②(良い意味での)期待は、経済において大事ではないか、と考えています。
私が経済学を学ぶきっかけになった、とあるマクロ経済学者の言葉をお借りします。「経済学は『予測』は難しい。しかし経済学において『過去』、そして『現在』を理解することはできる。」
(注)内閣府経済社会総合研究所の会長は慎重リフレ派の経済学者です。デフレから脱却できず、インフレが全く起こらないのは、慎重に禁じ手を行っているからと考えられます。
参考文献
Krugman.P.(1998),”It’s baaack: Japan’s Slump and the Return oh the Liquidity Trap,” Blooking Papers on Economic Activity 2, p137-200
日本語版:山形浩生訳
ysugie
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なるほど、わかりやすいですね。本当にストライクゾーンすれすれを狙って、豪速球を投げ続けている感じがします。前へ進もうというときには、経済部の記者は応援メッセージを、あえて出し続けるのが基本ですが、同時にそれが寄って立つ経済基盤の脆弱性についても、わかりやすくリポートする義務があります。
目の前の景気循環も大事ですが、より長い目で見たらどうなのか。外から見た方がよく分かるようです。ハーバード大学のケネス・ロゴフ教授がロイター紙日本向けに寄せたコメントが興味深いです。
専門用語を使わなければいけないこともあり..すみません…。
(元々の原案がポール・クルーグマンというノーベル経済学者なので)
野田元首相が禁じ手に応じず、純増税に踏み切った理由は
学者Aさんの会話「国民の理性を最後に信じたかったから」
学者Bさんの会話「尋常な感覚では怖くて応じられない」です。
大胆な安倍首相です。
(党首答弁で安倍総裁が「ポピュリスト」発言を野田首相に対し、しています。)
日本の労働経済学が、まだ応用量が弱く、人口問題、移民問題はどちらかというと
政治の側面(法体制をどうするか等)が大きいのではないか、と私は考えています。
日本語訳の論文まで探してくださり、ありがとうございました。
杉江さんは、非常に経済学に詳しいと私は思っているのですが、杉江さんのご著書に
簡単な経済学の本を読むことが大切、と書いてあったのですが、どの本がお勧めでしょうか?
僕が経済学に詳しいというのは大間違いです。六甲台でも、一般教養課程の大教室で居眠りしながら聞いていたレベルです。
坂井さんのようなプロフェッショナルな方にお勧めできる本なんて、めっそうもない。あしからず。
(時期が遅れましたが)杉江さんにお勧めの本を聞いた理由が2つあります。
①私が近代経済学を面白いと思うまで、最低1年はかかったこと
(最初は数学ばかり使っていて辛かった)です。
他の方にもお勧めできるような本を知りたい。
②本は情報源として私は最高峰だと考えています。文章をかける限られた方
しか本は出版できません。さらに本を出版するまでに、推敲に推敲を重ね
期間がかかります。杉江さんの本も出版するまでに沢山時間をかけら
れたと思います。