jumpei-yasuda-1-exlarge-169今年6月、取材のためにシリアに入国したジャーナリストの安田純平さんが、現地の国際テロ組織アルカイダ系の武装集団に身柄を拘束され、身代金の要求を受けていると「国境なき記者団」からの連絡があったことを、毎日新聞とN H Kが伝えました。なぜ半年余りも公表されていなかったのでしょうか。日本の政府は知っていたはずです。水面下で交渉を続けていたと、好意的に解釈することもできます。しかし僕は少々うがった見方をしています。もっと早期に着手して適切な対応をとれば、安田さんの開放は早まったのではないでしょうか。

昨年「イスラム国」に拘束され殺害された、後藤健二さんや湯川遥菜さんの事件の二の舞いになることだけは、政府としては見過ごしてはなりません。今回安田さんを拘束しているのは、「イスラム国」ではなさそうです。トルコからシリア北西部のイドリブ県に入ったとみられることから「ヌスラ戦線」という組織である可能性が高いと言われています。どのように過激な集団なのかは分かりませんが、「イスラム国」ほどクレイジーではないと期待したいです。 人の命は地球よりも重いと言います。5年も続くシリアの内戦の状況を取材し、伝えようとした安田さんはPRESSとして守られるべきです。

このような話をすると、必ずと言っていいほど「危険とわかっている地にわざわざ踏み込むのは本人が悪い。政府を困らせるべきではない」といった自己責任論を展開する、頭の悪いコメンテーターが何人も発言します。このようにジャーナリズムに無知な輩からのバッシングは、前回の後藤さんの時に、イヤというほど見せつけられました。タレントのデビ夫人などは、政府に迷惑かけないよう後藤さんは自決すべきだ、とまで言ったのです。

ひどすぎる後藤さんバッシング

シリアは危険だから行くな、と言いますが、なぜシリアが危険だということが分かったのでしょう。シリアにどういう問題があり、現状はどうなりつつあるのか。それを私たちが知ることができるのは、安田さんら戦場ジャーナリストが現地で調査してレポートしてくれたからなのです。危険だからという理由でジャーナリストが全員退避してしまったら、それらの事実は伝わってきません。なぜシリアであんなに大量な難民が出ているのか、問題の本質をつかむことはできません。もっと言えば、シリアの内戦自体が、国際社会の中で無きものにされてしまうかも知れないのです。

ちょっと前までは、アラブの人たちは日本人に非常に親しみを示し、優しく接してくれていました。アメリカに原爆を2回も落とされた国、ということで同情をかっていたとも言われています。そもそも日本は歴史上一度たりともアラブの国々と戦火を交えたことはなく、恨まれる筋合いもなかったのです。変な話ですが、PLOを支援する「ニホンセキグン」という日本人が、テルアビブでイスラエルを相手に自爆テロを起こしたことで、日本人は英雄視されるようになった、というおまけ付きです。

要するにイスラム過激派と十字軍との対立なので、日本がクビを突っ込む理由もありませんから、放っておけばテロの対象になる心配もないのです。欧米対中東の戦いに、極東の日本は手を出すべきではありません。むしろイスラム社会にも理解を深め、中立的な立場をとるべきです。仏教と八百万の神を信仰する民俗として、多様性を受け入れる先進国になるべきです。アラブとの蜜月の日々は戻ってきませんが、少なくともジャーナリストの中立性くらいは認めてもらえる状態になることを、早急に目指すべき時なのではないでしょうか。

12月25日加筆:現時点では身代金の要求は無かったということです。

2018年10月24日追記

昨日、3年ぶりに安田純平さんが解放されたというニュースが入ってきました。無事とのことで何よりです。心身共に衰弱しての帰国になるでしょうから、くれぐれもアホなバッシングなどはしないでもらいたいものです。

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ysugie


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1 thought on “安田純平さんの安否が非常に心配だ

  1. >「危険とわかっている地にわざわざ踏み込むのは本人が悪い。
    >政府を困らせるべきではない」といった自己責任論を展開する

    「『記者はなぜ非常線に入れるのか』、その問いの答えは、
    『国民の知る権利に奉仕するためだ』。以後、私はこの言葉を
    肝に銘じることにしました」。

    「いま、君たちに一番伝えたいこと」池上彰、日本経済新聞社
    「迷ったら、初心と理想を忘れるな」P14要約

    この本は、杉江さんの著書と同様で、私の指南書になりました。

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