いまでこそ鴨がどうの生肉がどうのと、いっぱしの口をきいているすぎやんではありますが、もちろん若かりし頃から食べ物について語っていたわけではありません。
むしろ昔の人間なのでしょうか、英国貴族のように、あるは侍のように、男たるもの食べ物ごときでガタガタ言うべからず、という気風を重んじていました。(というかお金がなかった。)

お話は僕の大学生時代にさかのぼります。
必修であるにもかかわらず最も苦手で、授業を逃げ回っていた科目がフラ語(フランス語)でありました。
なにしろ教授が思いっきりキザなのです。
アルファロメヲ・スパイダーで学校に乗り付け、服装も先公ににあるまじき派手さ。発音も巻き舌でRとか発音しちゃって(あ、これは仕事か)あまり授業にでたくなかったのです。

で、使われたフランス語のテキストブック。
これがまた、たまりません。
自分で購入しておきながら首筋がかゆくなりました。
「なんじゃらグルメほにゃらら」というタイトルでした。
フラ語は苦手でも、グルメという文字くらいはすぎやんだって背表紙から読み取れます。

各チャプターが、蠣だとか白ワインだとか食材の項目になっていて、そのうんちくが書かれています。学生が一人ひとつのチャプターを和訳してきて、毎回発表するのです。

グルメという言葉とすぎやんが出会ったのは、このときが初めてですが、なにしろバンカラ気風の学生すぎやん。
けっ、なにがグルメじゃい!
授業にはちらちら顔を出したものの、次回の宿題を割り当てられる時刻には、教室からとんずらして難を逃れていました。

ところが!

どうやら一回は和訳を担当しなければ、単位がもらえないということが後半の方になって通告されました。
必修科目ですから、単位がもらえない限り卒業はできません。
すぎやんは悩んだ末、学期の最後になって宿題を割り当ててもらうことにしました。
テキストブックの和訳はおおかた終わっていて、僕の担当は最終章でした。

チャプターのタイトルを見て、僕は呆然。。。
クラスメートはげらげら笑っています。

最終章のタイトルは、
「カニバリズム」

む。。。。

クラスの友人たちは、すぎやんにピッタリのテーマだだ、とはやし立てていました。
授業をさぼって逃げ回っていたツケが、こんな形で回ってくるとは、、、。

後にも先にも、すぎやんがフランス語の長文を和訳したのは、この作品が最初で最後であります。

ysugie


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